| sugitaru • PM |
Jan 02, 2014 12:33 AM
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sugitaru
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軽井沢は、ほんとに貴君に気に入りそうなところですわ。何とか都合して、一日でもいいから遊びにいらっしゃいませんか。夜など、一人でぼんやりしているとき、貴君のお部屋の容子なんか、よく思い出していますのよ。今頃は物干しに、貴君はきっと朝顔の鉢をいくつも並べているでしょうね。いつも貴君の書棚の上にかかっている「読書随処浄土」というお父さまが、お書きになったという字額が、すぐ目に浮んできますのよ。ここでは、貴君とお話しするように、心からお話の出来る人は、誰もいませんの。……
七月も終りになってから、美沢の通っている練習所も閑散で、練習はほとんど休みになったので、美沢は大抵家にいた。 この手紙も、昼を過ぎた暑い部屋でよんでいた。面と向って話していると、センチメンタルなところは少しも感ぜられない新子ではあるが、手紙となると、お互に別れて半月以上にもなるせいか、ひどく熱情的になったような気がした。 そして、新子の心はいつも、自分の身辺にまつわっていてくれるような気がして、心強い感激を感じるのであった。 やはり、新子は自分を愛していてくれるのだ。ただ、現代の女性が、多くそうであるように、愛情と結婚とを性急に、むすびつけようとしないだけなのだと思った。 彼は、新子の手紙を二度くり返して読んだ。そして、四、五日の内に、一度軽井沢へ行ってみようと思い出した。 本 買取 |