| sugitaru • PM |
Feb 12, 2014 10:04 AM
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sugitaru
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「加寿子はどうだ?」 彼は促した。 「でも、やつぱり、お母さんて呼ぶの?」 「さう呼べるひとがいいぢやないか」 「結城さんぢやないんでせう?」 この逆襲を、彼は待ち構へてゐたやうに、 「さうぢやない。それははつきりいつとく」 「そんなら、どうでもお父さまのいいやうに……あたしはいいわ」 四 「あたしは、いいわ」 と、いつてしまふと加寿子は激しく瞬きをした。涙がぼろぼろとこぼれた。 それをみて、田丸は「しまつた」と思ふ途端、横から世津子が、いきなり、思ひ余つたやうな声で、 「あたしは、いや」 と、実に、キツパリ、が、少しヒステリカルな調子で叫んだ。 「お前にはまだ訊いてゐないぞ」 と、田丸は喉まで出かかつた言葉を、ぐつと呑み込んで、今度は、その方へ向き直つた。 「どうしていやなんだ?」 努めて、やはらかく言葉をかけた。 「どうしてでも、いや」 「どうしてでもいや……ふむ、ほんとのお母さん以外のひとを、お母さんと呼ぶのはいやなんだね」 「お母さんみたいにされるのがいや」 新宿 美容室 |