| sugitaru • PM |
Mar 13, 2014 7:17 AM
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sugitaru
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もう、硫酸マグネシューム溶液が心臓にうちこまれてゐた。ピクリともしなかつた。
星住省吾は、かうして、手際よく、片つぱしから、狐の始末はしたが、どうにも、頭にこびりついてゐてはなれない、困つた問題がひとつ残つてゐた。 それはほかでもない、一年前から雇ひ入れた小舎番兼下男の為木音也を、この際、仕事も減るし、経費節約のため、暇を出したいのだが、さうすれば、当人が途方に暮れるだらう、といふことであつた。 こんなことは、世間にはいくらもあることだから、無態な追ひ出しかたさへしなければ、因果をふくめてほかの職を探させるぐらゐのことは、さまで苦にする必要はないと思はれるのだが、そこが、いろいろと他人にはわからぬ事情があつて、星住省吾は、明けても暮れても、そのことを想ひ悩んでゐるのである。 その事情といふのは、決して、複雑でも、深刻でもなく、言つて、わかるものにはわかり、わからぬものにはわからぬやうな、一種微妙な人間と人間との関係から成り立つてゐる。 そもそも、為木音也とはどういふ人物であらう。まづ手短かに、彼の経歴と人柄とを語らねばならぬ。 新潟市 歯医者 |