Vultr.com - Instant Cloud Server Deployment
過ぎたるは猶及ばざるが如し 1 MEMBER:
Home
Forum
News
Share on Facebook
Share on Twitter
Share on Google+
Forum Home > General Discussion > わたしは支那の女を
sugitaruPM
#1
わたしは支那の女を
May 25, 2014 11:38 PM
sugitaru Founder - Joined: Jul 28, 2013
Posts: 186
「わたしは支那の女を女房にしてゐます。北京にはもう二十年ゐますが、少しは御国のために働いたつもりです。女房が支那人だといふことは、わしが支那で仕事をする上の必要条件です。北京でMと云つて下さればわかりますが、これで見かけよりは信用がありますから」
 見かけはどうして、堂々たる紳士である。次に、自称「浪人」W氏、曰く、
「僕ですか、僕は別にこれといふ任務はないんです。ひとつ、これから黄河を渡つて、支那の真ん中に独立国でもこしらへようと思つてゐるんですが、うまく行きますか、どうか……。単身敵地へ乗り込んで行つての仕事ですから、下手をすれば生きては帰れません。文芸春秋はいつも愛読してゐます。文学のことはよくはわからんです。といふのは、少しは齧つてゐるといふことで、そのへんの連中とは違ひます。僕は、嘗て○○○の手記といふのを読んで感心した。○○軍を率ゐて南北を馳駆した時代のすばらしい記録です。内容も面白いが、文章がまた名文です。名文だと思ふんです、僕は……。それで、そいつを、仲間の川村といふ男と一緒に訳しかけてみたんです。川村といふのは、ほら、ご存じだと思ひますが、北京で桜井中佐の通訳をしてゐて、事変のはじめに戦死しましたな、あの男ですよ。僕は、そいつを川村の名で本にして出さうと思ひましたが、途中でこんなことになつたものだから、そのまゝで抛つてあります。ひとつ、お思召があつたら、それをなんとかして世に出して下さい。若し、いくらか金にでもなるやうでしたら、川村の遺族に送つてやつて下さればよろこぶでせう。原稿は北京にあります」
 と云つて、アドレスを附け加へた。
解剖生理学スクール 解剖学・基礎医学の個別指導塾・家庭教師