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過ぎたるは猶及ばざるが如し 1 MEMBER:
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Forum Home > General Discussion > みな相当に酔ひが
sugitaruPM
#1
みな相当に酔ひが
May 25, 2014 11:40 PM
sugitaru Founder - Joined: Jul 28, 2013
Posts: 186
 みな相当に酔ひが廻つてゐる。従軍僧のA氏をつかまへて、「生臭坊主」と呼ぶものがあり、A氏は眼の縁を赤くして戦帽の庇を押しあげた。
 やがて食事が終らうとする頃、堀内氏が帰つて来た。
 新たな命令を受けて来たらしい。
 隊員は、早くそれを知りたがつた。
 が、彼は、先づ椅子を引き寄せて、静かに席に就いた。と、思ふと、いきなり、手袋をつかんで食卓の上に叩きつけた。
「××がやられた」
「××が……?」
 一同は、眼をみはつた。
「△△も死に、また××もやられたとなつたら、あとはどうなるんだ。わしがゐないのがわるかつた。無茶をやりよつたに違ひない。惜しいことをした」
 堀内氏は泣いてゐるのである。
「責任感の強い男だからなあ」
 イガ栗頭の若い隊員が感慨をこめて呟いた。
 ××は、隊長代理として第一線に出てゐた、まだ三十前の青年ださうである。堀内氏は、この左翼転向者たる青年を最も愛し、信じてゐたらしい。
「ようし、わしがきつと仇を討つてやる」
 かういふ時には、かういふ言葉が、極く自然に出るものらしい。
「隊長には敵の弾丸がまともに中らないから不思議だ」
 隊員の一人がまた独言のやうに云つた。
「うむ、なにしろ、唇と喉笛とをかすつただけだからなあ。眼だつて大したことはないし……」
 彼は、さう云つて、唇と咽喉とに、皮膚をすれすれに指で弾丸の通る形をしてみせた。
「わしを是非前線へ出して下さい。かうしちやをられんです」
 さつきの若い隊員が席を蹴つて起つた。
「支那服を持つとるか?」
「いや、こゝには持つとらんですが……」
「僕が一着、古いのでよけれや持つてるよ」
 従軍僧A氏が、この時、一隅から声をかけた。
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