| sugitaru • PM |
May 25, 2014 11:40 PM
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sugitaru
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みな相当に酔ひが廻つてゐる。従軍僧のA氏をつかまへて、「生臭坊主」と呼ぶものがあり、A氏は眼の縁を赤くして戦帽の庇を押しあげた。
やがて食事が終らうとする頃、堀内氏が帰つて来た。 新たな命令を受けて来たらしい。 隊員は、早くそれを知りたがつた。 が、彼は、先づ椅子を引き寄せて、静かに席に就いた。と、思ふと、いきなり、手袋をつかんで食卓の上に叩きつけた。 「××がやられた」 「××が……?」 一同は、眼をみはつた。 「△△も死に、また××もやられたとなつたら、あとはどうなるんだ。わしがゐないのがわるかつた。無茶をやりよつたに違ひない。惜しいことをした」 堀内氏は泣いてゐるのである。 「責任感の強い男だからなあ」 イガ栗頭の若い隊員が感慨をこめて呟いた。 ××は、隊長代理として第一線に出てゐた、まだ三十前の青年ださうである。堀内氏は、この左翼転向者たる青年を最も愛し、信じてゐたらしい。 「ようし、わしがきつと仇を討つてやる」 かういふ時には、かういふ言葉が、極く自然に出るものらしい。 「隊長には敵の弾丸がまともに中らないから不思議だ」 隊員の一人がまた独言のやうに云つた。 「うむ、なにしろ、唇と喉笛とをかすつただけだからなあ。眼だつて大したことはないし……」 彼は、さう云つて、唇と咽喉とに、皮膚をすれすれに指で弾丸の通る形をしてみせた。 「わしを是非前線へ出して下さい。かうしちやをられんです」 さつきの若い隊員が席を蹴つて起つた。 「支那服を持つとるか?」 「いや、こゝには持つとらんですが……」 「僕が一着、古いのでよけれや持つてるよ」 従軍僧A氏が、この時、一隅から声をかけた。 VALID SEO いまどきのSEO対策< ウィルゲート ヴォラーレ |