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Forum Home > General Discussion > 其の頃ポルトガル國から
sugitaruPM
#1
其の頃ポルトガル國から
Oct 25, 2013 2:49 AM
sugitaru Founder - Joined: Jul 28, 2013
Posts: 186
 其の頃ポルトガル國から初めて渡つて來たタバコといふものの煙を、大きな灰皿の附いた管で、スパ/\吸ふことを、この古市あたりの女は少しづゝやつてゐた。伊賀の奧から出て來た文吾は、それが珍らしくて、女に教はり/\、火を點けて貰つたのを、一口吸ひ込んだが、厭にいがらつぽくて、眼を白黒にして咽せ返つた。女はよく鳴る手を拍つて笑ひこけた。
「さいぜんの敵打ちや、あんたは伊賀の山椒賣りの子や思うて、侮つてたら、えらいことしなはつたなア、そやけど、タバコには降參だすやろ、兜脱ぎなはれ。」と言ひ/\、女は文吾に摺り寄つて來た。
「わつはゝゝゝ。……」
 次ぎの間に大きな笑ひ聲が聞えたのは、源右衞門を始め同行の若い衆たちで、先刻から樣子如何にと、次ぎの間へ來て窺つてゐたのであるが、襖の隙から覗いたものが、こらへかねて大きな聲で笑ひ出したのに和して、五六人がどつと一時に笑つた。
 羞かしいといふことを、文吾は其の時初めて知つた。今までの恥かしいといふ心持ちとはまるで異つた羞かしさ! そんなものがこの世にあることを少しも知らなかつたのだから、全く文吾には或る世界の夜が明けたやうなものであつた。
 浮世の夜はだん/\更けて行くのに、文吾の夜は明けかゝつた。まだ固い寒梅の蕾が一夜の南風に綻び初めるやうなものであつた。
「おうい、邪魔すなやい。後家さんに頼まれて來たことがあるんぢや。」
 醉ひしれた源右衞門の千鳥足が、廣い廊下に響いて、文吾の小ひさな座敷を覗く同行たちを叱り飛ばす聲が聞えた。高級デリヘル 六本木 ASK