| sugitaru • PM |
Apr 21, 2014 9:13 PM
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sugitaru
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平衡といふ言葉はどうも専門語めいてしつくりしないが、私の云ふ意味は、けつきよく、「釣合がとれる」とか、「ちやうどいゝ」とか、「過不足なし」とか、時によると、「適度」「中正」などといふ言葉を使つてもよく、たゞ混同してはならないのは、「中ぐらゐ」とか、「穏当」とか、または「折衷」といふやうな概念である。要するに、決して「中間的」を指すのではないといふこと。その意味で、「中間的」をもつて平衡を保つものとする態度を、一種の自己偽瞞と称して差支へないのである。
この「中間的」なるものは、「微温的」であり、「だいたい間違ひのないところ」であり、「どつちつかず」であり、「鴆香もたかず屁もこかず」である。 こゝまで云へば、もうわかりきつたことであるが、「平衡」の感覚とは、例へば、月並な平衡を破つてより新鮮な平衡を求める精神のうちにもあるのである。しかしながら、それにしても、ともかく、平衡が保たれてゐるかゐないかを感じとる精神のはたらきは、「批評精神」と称せられるものの基本的な部分であつて、人間生活に新しい秩序と美とをもたらす不可欠の要素なのである。 この感覚が極度に鈍つてしまつたことが、日本の今日の不幸を招いた最大の原因のひとつであり、また同時に、日本の再起を絶望的とさへ思はせる唯一の理由でもあるのである。 池袋 美容室 |