| sugitaru • PM |
May 02, 2014 8:35 AM
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sugitaru
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私。俳優志望の理由を簡単に云つて御覧なさい。
志望者。理由と云つて、別にありません。たゞ、自分で芝居がして見たいといふだけです。 私。芝居をするといふのは、舞台に立つといふことですか。 志望者。さうです。 私。一つの芝居が出来上るためには、どういふ人々が必要であるか、それがわかつてゐますか。 志望者。それは上演する脚本によつて違ひます。 私。と云ふと……? 志望者。あゝ、僕は舞台の上のことを云つてゐるのです。舞台裏の人は別としてゞす。 私。舞台裏の人……。 志望者。作者や舞台監督もあります。 私。よろしい。君は、芝居をやりたいと云ひましたね。芝居をやるといふことのうちに、脚本を書くことや、舞台指揮をすることも含んでゐるとは思ひませんか。 志望者。含ませてもかまひません。 私。君が、自分で芝居をやりたいと思ふとき、さういふ方面の仕事について考へて見たことがありますか。 志望者。僕はさういふ方面には向かないと思ふのです。 私。それなら、俳優としての素質には、自信があるのですか。 志望者。自信があるとは云へません。たゞ、あゝいふ方法でなら、何んだか自分の気持が表はせさうだといふ気がするのです。 私。俳優は自分の気持を表はすだけが仕事ではありません。 志望者。えゝそれはわかつてゐます。人物の気持です。しかし、それが自分の気持にあつてゐなければならないと思ひます。人物の気持を自分の気持に融け込ませて、それを、自分の気持として表はさなければならないと思ひます。 私。さういふ演技論も成立つでせう。それなら、君は、あらゆる人物の気持を、君自身の気持として表はし得ると思ひますか。上越の美容室 |