| sugitaru • PM |
May 09, 2014 10:32 AM
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sugitaru
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そのひとの経済的な苦境がだんだん、美佐にも察しられるようになり、美佐は、そのひとのために、できるだけのことをしました。その時分は、まだ、美佐には希望と慰めがありました。けれども、今の商売をはじめてからというもの、そのひとの心は、だんだん、美佐から離れていくのがわかりました。実際は離れていくのではないのです。美佐のいることが、そのひとの心の傷になり、美佐の生きているすがたが、そのひとの堪えがたい苦痛になつたのです。それは、よくわかります。ふとした時に、自分をかえりみて、美佐は、顔をおゝいたくなることがあるのです。美佐は、そのひとを決して、恨んではいません。男の力ではどうすることもできない約束が、そのひとを縛つているのでしよう。美佐も、女の力ではどうにもならない、甘い呼び声に耳を傾けるようになりました。その声の方に、美佐は、知らず知らず、引かれていきます。今夜は、いよいよ、ひと思いに、惜しくもないからだを投げ出す決心をしました。これだけのことは、兄さま以外のだれにも言いたくありません。美佐は、ひとりぽつちだ、と思つたとたん、あのひとの顔が眼に浮ぶには浮びましたけれど、美佐は、それに向つて、なにも言うことがないのに、びつくりしました。立川市 リフォーム
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